大人の「自閉スペクトラム症(ASD)」とは?

公開日:2024/01/18  

大人の自閉症

自閉スペクトラム症という病気をご存知でしょうか。自閉スペクトラム症は、原因不明の病気です。

こだわりが強く、周りの人とコミュニケーションを取るのが苦手としています。相手の気持ちを読み取ることも苦手で、不本意に人を怒らせてしまうこともあります。

自閉スペクトラム症の人は、仕事をするうえでもストレスを抱えやすいです。向いていない仕事に就くと、よりストレスを感じます。

自閉スペクトラム症の人に向いている仕事も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

大人の自閉スペクトラム症(ASD)について

自閉スペクトラム症とは、どのような障害なのでしょうか。ASDとも呼ばれる障害ですが、症状や原因などについて、詳しく解説します。

自閉スペクトラム症は、日常生活に支障をきたす発達障害の1つです。子どものころに発覚することが多いですが、大人になってから発覚する場合もあります。

症状や特徴

自閉スペクトラム症の人は、対人関係や社会的な交流が苦手です。人と関わることが苦手で、相手の気持ちを読み取ることが難しいと感じます。

決められているルールを理解したり、グループで作業したりするのが苦手な人が多いです。自閉スペクトラム症の人は、ひとりでコツコツ作業をするのを得意とする傾向にあります。

そのため、周りの人からは「空気が読めない」と言われてしまうことも多々あるでしょう。職場や友人関係でも、相手の気持ちを読み取るのが苦手なので、人を怒らせてしまう場面もよくあります。

また、自閉スペクトラム症の人はこだわりが強く、ルールが決まっていても、自分流のやり方で物事を進めてしまいます。指示されていないことでも、気になったら手をつけてしまうのも特徴の1つです。

原因

自閉スペクトラム症の原因は、脳の障害です。生まれたときから脳に障害があり、原因は明らかにされていません。

親の育て方や自身の性格が関係しているわけではなく、遺伝的要因が大きいとされています。ただし、遺伝的原因が全てではなく、環境要因も関係していることが多いです。

自閉スペクトラム症の原因について、さまざまな研究が行われていますが、遺伝子や環境要因がどれほど影響するのかは定かになっていません。

自閉スペクトラム症の原因が、必ずしも同じというわけではなく、個人差があることを理解しましょう。

診断方法

自閉スペクトラム症は、生後2年目までに発覚することが多いです。早ければ、1歳半の健診時に発覚します。

しかし、大人になるまでわからない人もいます。自閉スペクトラム症の診断は、血液検査や写真では診断できません。

自身の様子や周りの環境、生育歴などから検査をします。これらの情報を把握するために、面談と検査の両方を実施しているクリニックが多いです。

面談では、自閉症診断面談(ADI-R)や自閉症診断観察検査(ADOS-2)が行われます。受診の際は、母子手帳や困りごとを残したメモがあると便利です。

自閉スペクトラム症の検査は、一度で終了するのではなく、何回かに分けて行われることが多いです。個人で断定するのは難しく、医療機関で診断されます。

治療方法

自閉スペクトラム症は、完治が難しい障害です。治療方法としては、環境調整や薬物療法などがあります。

環境調整では、周囲の協力と患者の特性に合わせた工夫で、家庭や職場での困りごとを少なくします。環境を整えることで、スムーズに行動しやすくなり、症状が出にくくなります。

この環境調整は、1人で行うことが難しいです。そのため、家族や職場に協力を求めたり、医師にアドバイスを求めたりすることが有効です。

また、カウンセリングが行われることもあります。環境調整やカウンセリングで症状が緩和されない場合、薬物療法も治療方法の1つです。

症状に対する薬が処方され、一人ひとりに合わせた薬物療法を行います。自閉スペクトラム症は、うつ病やてんかん、睡眠障害などと合併が多いです。

これらの障害による症状に合わせた薬が処方されるため、日常生活での困りごとも少なくなるでしょう。

うつ病にはカウンセリングも有効で、日常生活でのストレス軽減が期待できます。自閉スペクトラム症は、さまざまな障害と合併しやすいため、早期治療が大切です。

自閉スペクトラム症(ASD)が困ること

自閉スペクトラム症は、できることとできないことの差が激しいです。自閉スペクトラム症の人が困りやすいことについて、例を含めて解説します。

自閉スペクトラム症の人が苦手とすることは、共感が得られにくく、理解がされづらいです。これから紹介する内容が、自分や周りの人に当てはまることがあれば、精神科の受診をおすすめします。

あいまいな指示だとわからない

自閉スペクトラム症の人は、あいまいな指示だとわからないことがあります。言葉では理解できなくても、文字やイラストがあれば理解できるのは、自閉スペクトラム症の特徴です。

また、抽象的な指示が苦手で、具体的に伝えてもらわないと動きにくいです。たとえば、走らないという指示が難しいと感じても、歩くと指示されれば理解ができます。

一度の指示で、2つのことを伝えると混乱してしまいます。そのため、自閉スペクトラム症の人には、短い文章で具体的に伝えることが大切です。

言葉だけで理解するのが難しい場合は、イラストや文字を使って説明してみましょう。

騒がしい場所が苦手

自閉スペクトラム症の人には、感覚敏感の症状を持つ人もいます。感覚敏感の症状がある人は、音や光、匂いなど、感覚刺激にとても敏感です。

音や光の刺激が強い場所にいると、パニックを起こすこともあります。外出時、音や光などの刺激を感じたら、静かな場所に移動したり、イヤホンをつけたりして、気持ちを落ち着かせる必要があります。

感覚敏感は、周りの人に理解されづらい症状です。職場の照明がキツイなど、強いストレスを感じるのであれば、環境調整が必要です。

職場で理解を得るためには、自身の障害や症状について、しっかり説明するようにしましょう。自閉スペクトラム症の人が苦手とする刺激を、少しでも取り除けば、ストレスも軽減されます。

相手の感情をうまく読み取れない

自閉スペクトラム症の人は、周りの人とコミュニケーションを取ることが苦手です。相手の感情を読み取れず、意図せず人を傷つけてしまうこともあります。

コミュニケーションを取ることが苦手なので、集団行動で輪を乱してしまう人も多いです。コミュニケーションが苦手で、仕事に影響が出る場合もあります。

このような症状は、カウンセリングや診療を行い、少しずつ改善していきます。相手の気持ちを理解することが苦手なので、社会生活を送るうえでも、頭を抱えることが多いです。

他の人との距離がわからず、誰にでも同じ距離感で接してしまいます。時には、上司にタメ口を使うなどといった失敗をする可能性もあります。

反対に、どれだけ仲がよい友人でも、距離を感じるケースもあり、周りの人と適切な距離を把握できないことも特徴の1つです。

失敗をするのが怖い

自閉スペクトラム症は、失敗を恐れやすく、完璧主義である傾向にあります。ミスをしてはいけないという気持ちから、緊張をする場面が多々あるでしょう。

このように不安や緊張が続いたまま生活すると、大きなストレスにつながります。失敗をする不安や緊張が大きい場合、周りの人に相談するなど、リフレッシュが必要です。

失敗を恐れる理由として、過去に怒られた経験を思い出していることが挙げられます。過去にミスをして怒られた経験がある場合、それがトラウマになっている人もいます。

そのため、上司や同僚に注意されることを恐れ、不安を感じる人が多いです。また、ミスを指摘されることで、自分の存在を否定されている気持ちになることがあります。

今まで褒められた経験が少なく、自信がない人に現れやすい症状です。

急に予定が変更される

急な予定変更も、自閉スペクトラム症の人が苦手とすることです。自閉スペクトラム症の人は、こだわりがとても強いです。

仕事でのマニュアルやルールが突然変更されると、パニックを起こしてしまうこともあります。また、頻繁に変更があると強いストレスを感じ、体調不良にもつながります。

自閉スペクトラム症の人が周りにいる場合、変更があるときは前もって伝えておくとよいでしょう。急な予定変更は、強いストレスになります。

どうしても急な予定変更がある場合は、理由や経緯をしっかり説明することが大切です。

自閉スペクトラム症(ASD)かも?と思ったら

ここまで、自閉スペクトラム症の特徴などについて解説しました。これらの特徴から、自分が自閉スペクトラム症かもしれないと感じた人は、治療を始める必要があります。

日々の生活で生きづらさを感じているのであれば、クリニックを受診して治療を始めましょう。

自身でできる対処法

手順にこだわりがある人や急な予定変更が苦手な人は、作業を細かくリストアップし、優先順位をつけることで、作業がしやすくなります。

期日が設けられている業務で、間に合いそうにない場合は、早めに報告をしておきましょう。また、自分ひとりで解決できそうにないときは、周りの人に協力を求めることが大切です。

環境や状況を整え、対処方法を見つけることも1つの手です。まずは自分が困ることを取り上げ、環境を整えてみてください。

精神科を受診

18歳以上で自閉スペクトラム症の診断を受けるときは、精神科の受診が必要です。治療をするときも精神科への受診が必要になるため、なるべく早めに受診しましょう。

ただし、大人の発達障害を診断できるクリニックは少ないです。どの精神科も診断できるわけではありません。

受診をする前に、大人の発達障害の診断・治療を行っているか確認が必要です。自分で探すのが難しいときは、支援機関に相談し、紹介してもらいます。

精神科を受診すれば、自閉スペクトラム症の診断と治療が受けられます。治療を受けることで、困難に感じている生活も、緩和されることが期待できるでしょう。

支援機関へ相談

日々の生活で困難を感じ、自閉スペクトラム症かもしれないと思ったときは、信頼できる機関へ相談するとよいでしょう。相談する前に、自分が困難だと感じる出来事をメモしておくとスムーズです。

自閉スペクトラム症について相談できる機関として、支援機関があります。支援機関での相談は、無料のところが多いです。

支援機関には、発達障害者支援センターや障害者就業・生活支援センターなどがあります。発達障害者支援センターは、発達障害がある人に総合的な支援をしている専門機関です。

自閉スペクトラム症の診断が出ていない人でも、困りごとや悩みについて相談ができます。各都道府県に設置されており、誰でも気軽に相談できる機関です。

障害者就業・生活支援センターは、就業に関することだけではなく、生活面での相談も受け付けています。相談をしたあとは、支援もおこなっているため、強い味方となるでしょう。

仕事に関する悩みだけではなく、健康管理などのサポートもしてくれます。複雑な障害年金の申請についても、サポートをおこなっています。

自閉スペクトラム症(ASD)が働きやすい職種

自閉スペクトラム症の人が、働きやすい職種を紹介します。自閉スペクトラム症の人でも、自分に合う職種を見つけられれば、働きやすくなります。

自閉スペクトラム症は、苦手なことが多いです。しかし、反対に得意なこともあります。

得意なことを活かす仕事に就けば、力を発揮できるでしょう。

マニュアルがしっかり用意されている仕事

仕事のマニュアルがしっかり用意されている仕事であれば、自閉スペクトラム症の人でも働きやすいです。自閉スペクトラム症の人は、ニュアルやルール通りに行動ができます。

マニュアルやルールがしっかり整っていれば、問題なくこなせるでしょう。マニュアルがしっかり用意されている職種としては、経理やコールセンターなどが挙げられます。

自閉スペクトラム症の人は、記憶力も高いため、ひとりでコツコツ進める仕事にも向いています。

数字や論理など豊富な経験が活かせる仕事

自閉スペクトラム症の人の中には、数字や計算が得意な人もいます。数字や計算が得意な場合、経理の仕事がおすすめです。

数字や論理など、豊富な経験が活かせる仕事であれば、実力を発揮できます。ルールを忠実に守り、業務を進められるため、数字と向き合う仕事にも向いています。

専門知識が活かせるプログラマーも、おすすめの仕事です。

視覚情報が重要な仕事

自閉スペクトラム症の人は、視覚情報の処理能力が高いです。そのため、Webデザイナーなどクリエイティブな仕事にも向いている可能性があります。

Webデザイナーになるためには、経験や知識が必要です。職業訓練などを利用し、経験と知識を積みましょう。

Webデザイナーは、フリーランスでも活動ができる職種です。自宅で作業できるため、人間関係に悩まされることも少ないです。

人間関係にストレスを抱えている人は、フリーランスとして働くことも視野に入れてみてはいかがでしょうか。フリーランスであれば、自宅にいながら作業できます。

通勤で電車に乗ることもなく、ストレスを軽減できます。自閉スペクトラム症の人にとって、満員電車もストレスの1つです。

通勤や人間関係に悩んでいる人には、フリーランスがおすすめです。

自閉スペクトラム症(ASD)に向いていない仕事

自閉スペクトラム症の人には、向いていない仕事もあります。向いていない仕事に就くと、大きなストレスを抱えてしまい、体調を崩してしまう可能性があります。

就職して失敗しないためにも、向いていない仕事を理解しておくことが大切です。

短時間に複数の仕事を処理する仕事

自閉スペクトラム症の人は、短時間に複数の仕事を処理することが苦手です。たとえば、レジ打ちやレストランのウェイターなどの仕事は、複数の業務を同時にこなすため、向いていません。

短い時間に、複数の仕事を処理するような仕事に就くと、パニックを起こしてしまう可能性が高いです。自閉スペクトラム症の人が、ストレスなく働くためには、苦手なことを理解する必要があります。

これから就職をする人や転職を考えている人は、まず自分の苦手なことを理解しておきましょう。

予測が難しい仕事

ディーラーや旅行代理店など、予測が難しい仕事にも向いていません。先のことを予測して、行動するような業務は苦手です。

予測が難しい仕事には、しっかりとしたマニュアルが設けられていないことが多いです。自分で考えて、臨機応変に対応しなければなりません。

そのため、先のことが予測しやすい仕事がおすすめです。

柔軟な対応が求められる仕事

営業やオペレーターなど、柔軟な対応が求められる仕事も不向きです。マニュアルやルールがしっかり整っていれば対応できますが、急なトラブルなどの対応は苦手としています。

自分では予測できないトラブルが起きると、パニックを起こしてしまうかもしれません。そうなると、仕事にも支障が出てしまいます。

職場での評判も下がってしまい、働きにくい環境になってしまうでしょう。予約を扱う仕事や営業、オペレーターの仕事は、自閉スペクトラム症の人には向いていないので、避けた方がよいです。

まとめ

今回は、大人の自閉スペクトラム症について、詳しく解説しました。自閉スペクトラム症は、幼少期に発覚することが多いです。

しかし、大人になってから発覚する人も少なくありません。大人になってから、仕事や日常生活で違和感を感じる場合、自閉スペクトラム症である可能性があります。

自閉スペクトラム症の特徴と、自分の悩みを照らし合わせて、一致しているようであればクリニックを受診してください。診断・治療をすることで、ストレスを軽減できる可能性があります。

自閉スペクトラム症の人には、向いている仕事とそうでない仕事があります。自分の得意・不得意を理解し、仕事に就くことが大切です。

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