大人のADHDの症状と対処法とは?診断や治療方法、支援機関などご紹介。

公開日:2023/10/19  

人間関係やコミュニケーションに悩む方は少なくありません。職場や生活環境を変えても、うまくいかずに困っているという場合、もしかしたら発達障がいの可能性があります。

近年、大人になってから発達障がいとして診断される方が増加傾向にあります。本記事では、発達障がいの一つであるADHDについて特徴や特性、支援機関などを詳しく紹介します。

ADHDかも?と思ったら

職場や日常生活において、このような困りごとはありませんか。たとえば、「周囲が気になって、目の前の仕事に集中できない」「忘れ物が多い」「約束や期限を守れない」「マルチタスクが苦手」など、思い当たる項目が多いほど、ADHDの傾向があります。

子どものころはADHDの行動特性が強くなかったり、ADHDの特性があっても周囲が助けてくれたりした場合、発達障がいであると気づかれないことがあります。ところが、社会に出ると、仕事でミスをしたり、優先順位をつけられなかったりして、困難が表面化します。

その結果、大人になってから初めて「ADHDかも?」と思い、病院へ受診するような方もいます。ADHDの疑いがある方は、まずはADHDの特性を理解することが大切です。

そのうえで、自分が感じる生きづらさに対する対策を講じることで、ストレスを少しでも軽減することができます。さらに、ADHDの診断ができる医療機関への受診がおすすめです。

今後、生きやすい生活を送るために、今からできることを考えていきましょう。

ADHDの特徴や特性、原因

ADHDの特徴や特性、原因について詳しく解説します。

ADHDの特徴・特性

ADHDとは、“Attention-Deficit Hyperactivity Disorder”の頭文字をとったもので、直訳すると注意欠如や多動症を意味しています。その名の通り、不注意や多動傾向といった特徴を持ちます。

物をよく失くす・スケジュール管理が苦手・集中力がなく、ケアレスミスが多いなどの特徴は、不注意にあたります。また、落ち着きがない・衝動買いしてしまう・一方的に話してしまうなどの特徴は、多動性・衝動性にあたります。

このようにADHDには、多動性や衝動性、不注意などの特徴がありますが、人によって特性の表れ方が異なります。おもに、多動・衝動性傾向が強いタイプ・不注意傾向が強いタイプ・多動・衝動性と不注意が混在しているタイプに分けられます。

ADHDの原因

ADHDの根本的な原因はわかっていませんが、脳機能の偏りが一因であるとされています。ADHDの方は、集中力を保ち、行動を計画する働きをもつ前頭前野とスムーズに行動を行う尾状核の働きが弱いといわれています。

また、神経伝達物質であるドーパミンも関与していることが明らかになってきています。これらの脳の機能が原因で、発達や成熟に偏りが生じていると考えられています。

育て方やしつけによってADHDの特性が表れると考える方もいますが、これは誤りです。かつては、ADHDの症状は成長に伴って改善すると考えられていました。

しかし、近年では、慢性的な経過をたどることが多いことが判明しています。大人のADHDが増加傾向にあるのも、そのためです。

ADHDとASDの違い

発達障がいの一つに、ASDがあります。ASDとは、自閉スペクトラム症を意味しており、知的障がいを伴う自閉症と知的障がいを伴わない自閉症、いわゆるアスペルガー症候群を総称したものです。

ASDには、おもに2つの特性があります。相手の気持ちを表情や言葉のニュアンスから察するのが苦手な対人関係におけるコミュニケーション障がいと、特定の対象に強い興味を示す同一性へのこだわりです。

ASDは、その場の状況に合わせて柔軟に対応するのが苦手ですが、一方でルールが決められた作業を得意としています。このような特性を持つASDと不注意や多動性といった特性を持つADHDは、同じ発達障がいといっても異なります。

ただし、ADHDとASDは区別がつきづらいため、初めはADHDと診断されていた方でも、のちにASDであると再診断されるようなケースもあります。また、なかにはADHDとASDの両方の特性を持つ方もいます。

ADHDの診断や治療方法

ADHDは、アメリカ精神医学会によるDSM-5を基準として診断を行っています。具体的には、問診やカウンセリング、検査を実施しています。

ADHDかどうかを診断するためには、子どものころの様子がわかる情報が必要とされる場合があります。状況によっては診断がすぐに出ないこともあるため、小さい頃の生活態度がわかるような物があれば、用意すると良いでしょう。

ADHDの治療としては、おもに薬物療法や環境調整・認知行動療法などが行われています。薬物療法とは、ADHDの症状を改善するための薬を服用するものです。

薬には、脳内の神経伝達物質のバランスを整えるなどの効果があります。人によって合う薬は異なるため、主治医とともに治療を行っていきます。

環境調整とは、自分の得手不得手を理解したうえで、苦手なことを補うための生活習慣を見直すことです。たとえば、約束を忘れやすいという特性を持つ方は、スマートフォンのリマインダーやカレンダー機能を活用するといった方法があります。

そのほかにも、集中力が低く、ケアレスミスが多い方は、耳栓をつけたり、周囲との間に仕切り板を用意したりするなどの対策を行います。このように環境を整えることで、苦手分野をカバーできるように対処します。

認知行動療法とは、考え方や価値観といった認知のゆがみを改善し、状況に応じた行動ができるようにトレーニングすることです。認知行動療法を通じて、ストレスを軽減し、社会への適応力を伸ばしていきます。

ADHDかも?と思った時の相談先

自身がADHDかもしれないと思ったときは、まず自身の得意・不得意を理解することが大切です。そのうえで、自分の特性に合った環境を見つけ、どのように対処すれば苦手な部分を補えるのかを見つけていきましょう。

一人で解決することが難しい場合、ADHDも傾向を持つ方をサポートする支援機関に相談してみましょう。ADHDに対する相談先としては、第一に病院やクリニックなどの精神科・神経科・心療内科が挙げられます。

ただし、ADHDを含めた発達障がいの診断を専門的に行っている医療機関は少ないのが現状です。診断内容や治療方法に納得がいかない場合は、セカンドオピニオンを検討するのもおすすめです。

発達障害者支援センターに相談することで、専門的な医療機関を紹介してもらえることもあるため、積極的に活用してみましょう。発達障害者支援センターは、各都道府県の指定都市に設置されています。日常生活や仕事でのあらゆる困りごとに関して、相談を受け付けています。

そのほか、全国各地でADHDがある方の自助グループが作られています。同じような悩みを抱える仲間が集まっているため、生活の困りごとを解消できるアイデアを共有できる可能性があります。

インターネットなどで検索することで、自宅から近い自助グループを見つけることができます。

まとめ

今回は、ADHDの症状や診断方法、治療内容について解説しました。ADHDは発達障がいの一つであり、大人になってから初めて診断を受ける方が増加しています。

発達障がいの特性が表れることで、仕事が困難になり、二次障がいとしてうつ病などを発症する方もいます。自身がADHDかもしれないと思ったら、まず自分の得手不得手を理解することが大切です。

そのうえで、円滑に日常生活を送るための対処法を考えてみましょう。医療機関や支援センターに相談することで、サポートも受けられます。本記事が参考になれば幸いです。

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